明治学院大学パレットゾーン(福利厚生施設)

パレットゾーンは白金再開発第3期計画の施設である。生活施設を中心とし、スタジオ・アリーナゾーン、サークルゾーン、インナー広場などから構成される。一つの閉じられた建物ではなく、人々の活動の領域として捉えられており、次の4つの点を基本理念としている。
1. 人々が集まり、交流する広場をつくる。
2. 集う人々が創造的活動や表現を行える場をつくる。
3. これらの空間を柔らかく包む。
4. 新たな運営哲学により常に何かが行われているような明治学院の文化活動の象徴となる。

この空間は特定のものの特権となる空間ではなく誰でもが使える空間をつくるというパブリックな思想を目指し、皆が互いの活動や生活に触れ、自己を表現し、交流できるコモンスペースを追求している。また、オープンな空間が連続することにより閉鎖性を打ち破り、人と活動のネットワークをつくってゆこうとしている。個が開いてゆくことによる活動のつながりをつくり、創作の場としての大学を目指している。

中心にはインナー広場という明るい透過性のあるアトリウムのような空間が用意されている。ゾーン全体はこのインナー広場に代表されるように全体を広場をつくるように考えられている。この広場群は皆の共有の創作や表現の場であり、様々な活動を生み出す場所となってゆくように考えられている。この広場の空間が対話や交流、生活や文化を生み出してゆく。


キャンパス全景

中央、桜田通りに面して本館(93年竣工)、右奥の施設がパレットゾーン。手前にはヴォーリズ設計のチャペル、歴史的建造物であるインブリー館(重要文化財)、記念館(都文化財)が残っている。


全景

キャンパス北側からの全景。中庭を中心にサークルゾーンとインナー広場が向かい合う。右側の瓦屋根が2号館、奥の建物が本館。スカイラインに見えるのは品川駅の高層ビル群。


アプローチ

桜田通り側の新設ゲート。伸縮式のアルキャストのゲートから校内道路が始まり、パレットゾーンをくぐり抜けて、高低差10mのキャンパス内部へと上ってゆく。


校内道路からインナー広場を見る

校内道路には施設のすべての部分が接している。サンクンガーデン越しに上部のインナー広場が垣間見える。上部の天井はアートホール。


校内道路からサークルゾーンを見る。

サンクンガーデンを過ぎると右手にサークルゾーンが見える。行き来する学生と上部の学生との身近な関係がコミュニケーションをつくりだす。


北西からの全景

校内道路を上りきったところ。既存の大きなケヤキの木を残している。


中庭側全景

ケヤキ越しの中庭。インナー広場とサークルゾーンが中庭を中心に向かい合う。


中庭

様々な視線が行き交う休憩場所。

中庭側ファサード

サークルゾーンから見たインナー広場北側ファサード。


ファサード

インナー広場夜景。都市に浮かぶ舞台のように見える。


インナー広場

インナー広場は明るいアトリウム的スペース。ハンバーガーショップが設置されており、カフェテリアとして利用されているが、常時ラウンジとして開放されており、待ち合わせや勉強の場所としても利用されている。


隣接する半屋外テラスから


インナー広場南面

調光用の可動ルーバー。また、閉じることにより吸音面に囲まれることになり、吸音効果を高め、音響調整を行うことができる。

ダイニングラウンジ

4本組みのV字柱の列柱により、視線の通る開放的なダイニングスペースとなっている。厨房だけを独立して閉鎖することができ、常時ラウンジとして開放されている。


ダイニングラウンジ

周囲は可動の木製格子戸に囲まれている。開放すると周囲の緑の外部空間がパノラマに広がる。


アートホール

200から300席収容できる平土間の多目的ホール。レンガの透かし積みにより吸音面を確保している。壁内には可動のカーテンが組み込まれており、音響を調整することができる。


アートホール

アーム椅子(pico)と舞台がセットされたところ。picoとarincoの2種類の椅子が用意されている。2階にはギャラリー、調整室が設置され、多目的なイベントに対応できるようになっている。


サンクンガーデン

地下のスタジオ、アリーナゾーンの中心となるサンクンガーデン。中庭から直接階段で降りてくることもできる。


Lスタジオ

学生の練習用ホールとしてL,M,Sの3種類のスタジオが設けられている。インフォメーションラウンジで手続きをすれば誰でも使用することができる。


アリーナ

地下3階にスポーツ施設が配置されている。コンサートやイベントにも使われ、正面のスロープを利用し、外部からもアプローチできる。

サークルルーム

各サークルの共有のスペース。これまでの専有化した部室を廃止し、活動を促すようなオープン化された空間を目指している。外部からはショーウィンドウのように見られる。

データ
件名 明治学院大学パレットゾーン(明治学院白金再開発第3期計画)
所在地 東京都港区白金台1-2-37
用途 大学(福利厚生施設等)
構造/規模 鉄筋コンクリート造一部鉄骨造/地上3階、地下3階
地域/地区 商業地域一部第2種住居地域、防火地域一部準防火地域
敷地面積 37,445.18u
建築面積 3,527.41u (全体:16,397.77u)
延床面積 12,286.51u (全体:72,858.74u)
 
設計
建築設計 内井昭蔵+内井昭蔵建築設計事務所
設計 内井昭蔵 島崎義治 早川晴彦 川口孝男 毒島智和 向井裕 原田亜紀 金児誠之 
監理 内井昭蔵 島崎義治 金児誠之
構造設計 川口衞構造設計事務所 川口衞 阿蘓有士 伊原雅之 永田秀正 高橋裕二
設備設計 森村設計 空調衛生 鈴木幸正 吉田崇  電気 森本c男
音響設計 永田音響設計 福地智子 菰田基生
造園設計 野沢鈴木造園設計 野沢清
設計期間 1995.12〜1997.3 基本構想
1997.7〜1998.11 基本・実施設計
施工期間 1999.1〜2001.3
竣工写真 新写真工房 堀内広治
掲載紙 新建築 2001年8月号 「PEN」2002年4月号
施工 本体工事 大成建設(電気 関電工/空調 新菱冷熱工業/衛生 旭シンクロテック/
          EV 三菱電機/植栽 富士植木)
AV工事 ビクター
家具工事 ノルインターナショナル
サイン工事 むつみや
主要メーカー
屋根 テフロン膜 太陽工業 
鉄骨工事 駒井鉄工
カーテンウォール フジサッシ
可変ルーバー 昭栄建材
アルキャスト門扉 菊川工業
レンガ、タイル 大和窯業
基本構想からかかわり5年をかけて完成した。大学本館、インブリー館修復、2号館を経験し大学の姿勢が変わってゆくことが実感できたと思う。このパレットゾーンでは大学と学生の関係を模索した。かつて学生たちは空間を専有化することで自立を表現していたが、大学改革といわれる今、大学は快適に自由に公正に安全に利用できることを学生たちに提供し、学生たちはその枠組みの中で空間を最大限活用することを発見した。また、同時に学生たちの活動が共有化することを目指している。サークルルームは各サークルの共有の場であり、ラウンジ的である。これまでのような専有化された閉じこもる場所であったり、伝統の保管場所でもない。様々なサークルが隣り合い、たとえば音楽と演劇が共に場を共有することにより新たな創作活動が生まれてくるような場となっている。すべての場所がこうした共通の理念を持ち、パブリックな思想を確立し、皆が互いの活動や生活に触れ、自己を表現し、交流できるコモンスペースを追求している。

担当  島崎 義治